2025-08

【統計学と計量ファイナンスの基礎】

相関と共分散:ポートフォリオ分散の鍵を握る数学

概論「卵は一つのカゴに盛るな」――これは、投資の世界における最も古く、そして最も重要な格言の一つです。異なる種類の資産に資金を分散させることで、リスクを軽減できるというこの直感的な知恵を、数学的な厳密さをもって体系化したのが現代ポートフォリ...
【統計学と計量ファイナンスの基礎】

カルマーレシオとスターリングレシオ:最大ドローダウンを考慮したリスク評価

概論ある投資戦略のパフォーマンスを評価する際、私たちはしばしば「リスクに見合ったリターン」を測るための物差しを必要とします。その代表格であるシャープレシオは、リターンのボラティリティ(標準偏差)をリスクとして用います 。しかし、多くのトレー...
【統計学と計量ファイナンスの基礎】

シャープレシオの限界とソルティノレシオ:下方リスクだけを考慮したパフォーマンス測定

概論ある投資戦略が、もう一つの戦略よりも「優れている」とは、どういうことでしょうか。単にリターンが高ければ良いのでしょうか、それともリスクが低ければ良いのでしょうか。この「リスクに見合ったリターン」を測るための、最も普遍的で強力な物差しが、...
【統計学と計量ファイナンスの基礎】

歪度(スキュー)と尖度(カートシス):リターン分布の「歪み」と「尖り」が示すリスク

概論資産のリスクを評価する際、最も一般的に用いられる指標は「ボラティリティ(標準偏差)」です。これは、リターンのばらつきの大きさを測るものであり、ハリー・マーコウィッツが提唱した現代ポートフォリオ理論においても、リスクとはリターンの分散(ボ...
【統計学と計量ファイナンスの基礎】

正規分布とファットテール:なぜ金融市場の暴落は「想定外」に起きるのか

概論金融の世界では、将来の不確実性を飼いならすため、様々な統計モデルが用いられてきました。その中でも、最も基本的で、かつ長年にわたり金融理論の根幹を支えてきたのが正規分布(Normal Distribution)、いわゆる「ベルカーブ」です...
【統計学と計量ファイナンスの基礎】

期待値:全ての取引の基本となる「儲けの見込み」の計算方法

概論「このトレードは、儲かる見込みがあるのか?」――全ての取引は、この素朴な問いから始まります。この「儲けの見込み」を、確率論を用いて客観的な数値として表現したものが期待値(Expected Value)です。期待値は、ギャンブル理論から現...
エッジトレードの基本

idiosyncratic Volatility Puzzle:個別銘柄リスクが高い株のリターンはなぜ低いのか

概論伝統的な金融理論では、リスクは二つの種類に分解されます。一つは、市場全体と共に動くことで避けられないシステマティック・リスク(市場リスク)。もう一つは、その企業固有の要因(新製品の成功、不祥事など)によって生じるイディオシンクラティック...
エッジトレードの基本

Post-Earnings Announcement Drift (PEAD):決算発表後の「じわじわ動く」株価の謎

概論「市場は効率的であり、公開された情報は瞬時に株価に織り込まれる」――これは、現代ファイナンス理論の根幹をなす効率的市場仮説(EMH)の基本的な考え方です。この仮説が正しければ、企業の決算発表のような重要なニュースが出た瞬間、株価は即座に...
エッジトレードの基本

長期リバーサル効果:3年から5年で発生する「勝者と敗者」の入れ替わり

概論:市場の「行き過ぎ」とその揺り戻し市場には、「トレンドは友」という言葉がある一方で、「人の行く裏に道あり花の山」という逆張りの格言も存在します。この二つの相場観は、時間軸によってその有効性を変えることが、学術研究によって示されています。...
【モメンタム戦略】

短期リバーサル効果:モメンタムと逆行する短期的な市場の反動

概論:市場の記憶は驚くほど短い?「トレンドは友(Your trend is your friend)」という相場の格言があります。これは、中期的な(3ヶ月〜12ヶ月)時間軸においては、過去の勝者が勝ち続け、敗者が負け続けるというモメンタム効...