トレーダーの9割が負ける? 複数のデータが示すデイトレードとFX・CFDの厳しい現実


「トレードで億万長者になる」「専業トレーダーとして自由な生活を送る」といった華やかな成功譚は、多くの人を魅了します。しかし、その裏には、市場で利益を出すことの厳しさを物語る、厳しい現実が存在します。

当サイトの記事「トレードでどれほどの人が損失を出しているのか?公開データをもとに徹底試算」では、日本のFX売買における10年分の公開統計データをもとに、どれほどの割合の人が損失を出しているのかをシミュレーションで試算しました。非常に悲惨な結果で、10年後に利益を出せている確率はわずか4.8%、20人に1人もいないというものでした。
ただ、実際がどうなのかを知ることは本当に難しく、答えは一つではありません。マーケットのような複雑怪奇なものを相手に正しさを考えたり判断する際には、複数の意見や答を知っていることがとても重要です。今回はさらに、様々な情報を比較してみましょう。

国内外の信頼できる調査や報告書は、大多数の個人トレーダー、特にトレードスタイルがデイトレードであったり、マーケットがCFD・FXであったりすると特に損失を出しやすいという事実を示しています。今回は、こうした損失を出すトレーダーの割合について、複数の信頼性の高いデータを基に検証し、その根拠を提示します。

デイトレードの成功率はわずか3%? 97%が損失を出すという衝撃的な事実

デイトレード、すなわち株式や先物、為替などを1日のうちに売買を完結させる手法は、少額の資金でも短期間で大きなリターンを得られる可能性があるため、特に初心者にとって魅力的に映ります。しかし、その成功率は極めて低いことが複数の調査で明らかになっています。

デイトレードにおける損失確率の高さ

デイトレードの厳しさは、学術的な世界でも繰り返し指摘されています。その中でも特に象徴的なのが、ブラジル証券取引委員会(CVM)の研究です。2013年から2015年にかけてブラジルの株式先物市場でデイトレードを始めた約19,646人を対象とした大規模な調査「Day trading for a living? (2019)」では、

  • 300日以上継続してデイトレードを行ったトレーダーのうち、97%が損失を出した。
  • 利益を出したわずか3%のトレーダーでさえ、その平均利益額は銀行の窓口係の平均給与を上回ることはほとんどなかった。
  • デイトレードの経験が長くなるほど、利益を出せるトレーダーの割合は減少する傾向にあった。


とされています。この調査は、単に「利益を出すのが難しい」というだけでなく、長期的に成功を収めることの「ほぼ不可能さ」を実証しています。

アメリカの著名な金融情報メディアであるInvestopediaも、同様の見解を示しています。同サイトの記事Is Day Trading Profitable?にて、”デイトレーダーのうち利益を出すのはわずか3%〜20%であり、最大で95%が損失を出す”と指摘し、デイトレードの利益率は非常に低いことを強調しています。

これらのデータから、デイトレード市場において、成功を収めることができるのはごく一握りのエリートトレーダーに限られるという厳しい現実が浮かび上がってきます。

英国金融行動監視機構(FCA)やEUのデータ-CFD・FX市場でも7〜8割のトレーダーが損失-

デイトレードだけでなく、CFD(差金決済取引)やFX(外国為替証拠金取引)といったレバレッジをかけたデリバティブ取引においても、同様に厳しい現実が報告されています。これらの金融商品は、元手となる証拠金以上の取引ができるため、小さな価格変動でも大きな利益を狙える反面、損失もまた大きくなるリスクを伴います。

英国の金融規制機関であるFCA(英国金融行動監視機構)は、CFD取引に関する報告書Percentage of Traders Losing Money Revealedにて、”約80%の顧客が損失を出している“と指摘しています。また、欧州の金融規制当局(ESMA)のデータに基づいた分析では、規制強化前のCFD取引における個人投資家の平均損失率は74%から89%にも達していたとされています。また、これに伴い、個人投資家のバイナリーオプション取引が禁止され、CFDも規制されることになりました(investmentexecutiveの記事ESMA to ban binary options, restrict CFDsなどで確認可能)。
欧州の規制により、CFD・FXブローカーは、ウェブサイトなどで「個人投資家口座の70〜80%がCFD・FXで損失を出しています」といったリスク警告を表示することが義務付けられています(ESMA adopts final product intervention measures on CFDs and binary options)。これは、規制当局がこの高い損失率を問題視し、投資家保護のために情報開示を求めた結果です。


なぜトレーダーの多くは損失を出すのか

なぜこれほどまでに多くのトレーダーが損失を出してしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの要因が考えられます。

過度なレバレッジとリスク管理の欠如

レバレッジは利益を増幅させる一方で、損失も同様に増幅させます。多くのトレーダーは適切なリスク管理を行わず、過剰なレバレッジで取引を行い、小さな相場の変動で大きな損失を被っている可能性があります。

感情的な取引と「カジノメンタリティ」

Quantified Strategies社はWhat Percentage Of Traders Fail? (How Many Lose Money? Statistics)において”トレーダーの70〜90%が失敗するという見解は概ね正しい数値だ”とし、その原因の一つとして「カジノメンタリティ」を挙げています。計画性のない衝動的な取引や、損失を取り戻そうとしてさらにリスクを増やす行為は、丁半賭博同然の心理状態であり、そうなった以上はもはや単なる確率の勝負に陥ります。確率勝負のギャンブルでは、確率的には、続ければ続けるほど負ける(勝てない)ので、破滅的な結果に至ります。

また、ブラジルの研究では、デイトレードでは1年間の取引日数が多いほど損失を出す割合が増えていくという興味深いデータを示していました。察するに、これは勝ちパターンなどは無視して、とにかく「相場に張りたい」という冷静さを欠いたギャンブル中毒のような状態であろうと察します。


まとめ:トレーダーとしての成功を目指すために

デイトレードやCFD・FXといった短期的な金融取引において、大多数のトレーダーが損失を出しているという事実は、国内外の複数の信頼性の高いデータによって裏付けられています。

  • デイトレードでは、長期的に成功できるのはごく一部で、最大97%が損失を出しているという研究結果がある
  • CFD・FXなどのレバレッジ取引では、70%〜80%の個人投資家が損失を出すという報告が一般的

こうした厳しい現実は、トレードを始める前に誰もが認識すべき重要な情報です。成功を目指すのであれば、運任せのギャンブル的な取引ではなく、厳格なリスク管理、継続的な学習、なによりも自分と相性がいいエッジを見つけて有利なチャンスでしかトレードしないこと、が必要です。ほとんどの人が負けるという市場の厳しさを大前提として、覚悟を以ってスタートに立つ必要があります。感情に流されず、早く自分に適したエッジを見つけること。そして、エッジが効く局面だけで取引することが、「大半の損するトレーダーたち」から抜け出すための第一歩と言えるでしょう。
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