トレードでどれほどの人が損失を出しているのか?公開データをもとに徹底試算

「トレードでは大多数の人がいずれ損失を出して退場する」とよく言われます。
これを実際のデータから理論的に検証してみます。
下記は一般社団法人金融先物取引業協会による、四半期ごとのFX口座の資金の増減の割合のデータです。

年度
減少口座割合(%)増加口座割合 (%)
2024463.6236.38
2024347.4652.54
2024272.9627.04
2024152.6147.39
2023449.2350.77
2023363.6036.40
2023249.9750.03
2023153.2446.76
2022451.2348.77
2022369.7130.29
2022258.6841.32
2022153.8846.12
2021454.4945.51
2021357.1542.85
2021253.3846.62
2021151.3648.64
2020445.5854.42
2020356.1243.88
2020258.1741.83
2020146.2553.75
2019473.2926.71
2019342.4557.55
2019258.7041.30
2019170.2829.72
2018447.5152.49
2018363.9136.09
2018251.4548.55
2018151.5548.45
2017473.4026.60
2017349.5750.43
2017252.4147.59
2017146.9853.02
2016459.6640.34
2016350.7349.27
2016253.0146.99
2016175.7624.24
2015470.5829.42
2015348.4751.53
2015266.9533.05
2015148.8651.14

出典:一般社団法人金融先物取引業協会
店頭外国為替証拠金取引/個別顧客区分管理金額正味増減口座数割合関連情報(預託金増減口座数割合情報)
Over-The-Counter Retail FX Margin trading / The percentage of accounts with net increases/decreases in Individual Amounts for Separate Management; “Deposit Increase/Decrease Account Percentage Information”
四半期統計データ(Quarterly data)2025年5月公表版より
https://www.ffaj.or.jp/library/performance/quarter_total/quarterly_data/

これだけ見るとそこまで大多数の人が損失を出しているようには見えません。

悪い四半期では76%もの口座の資金が減少していますが、40期分を平均すると56.6%となり意外と負けていないように思います。

ただ、よく考えてみてください。これは四半期ごとの増減割合のデータです。3か月ごとに56.6%の確率で負けるとしたら。もしもこのような条件で10年間続けると、いったいどうなるでしょうか。

そこで、トレードを継続した場合に利益が出る口座が、初期資金よりプラスになる口座がどれだけ減っていくのか試算します。

【前提条件】
初期資金: 100万円

損益変動: 1回の取引(1四半期)で、資金が +20% または -20% になると仮定
※FXでは、3か月でそれくらいの損益は当然に出てしまいます

確率: 各期の損益確率は、金融先物取引業協会が公表した2015年1期から2024年4期までの実際のデータ(店頭FX業者の預託金増減口座数割合)を使用
各期の勝敗:口座資金の増加を勝利、減少を敗北とする(実際は入出金もあると思われるが捨象する)
累計の勝敗:口座資金が初期資金の100万円を超えている口座を当期の勝利口座とする

年度累計期減少口座割合 (%)増加口座割合 (%)平均期末資金累計勝利の必要勝数累計勝利口座の割合 (%)必要勝率 (%)100人中の敗北者数
20151148.8651.141,004,5601勝以上51.1410049
20152266.9533.05936,4512勝以上16.9010083
20153348.4751.53942,1822勝以上42.876757
20154470.5829.42864,6213勝以上18.767581
20161575.7624.24775,5313勝以上27.556072
20162653.0146.99766,1944勝以上16.386784
20163750.7349.27763,9564勝以上30.145770
20164859.6640.34734,4375勝以上18.006382
20171946.9853.02743,3095勝以上30.865669
201721052.4147.59736,1436勝以上20.926079
201731149.5750.43737,4106勝以上32.275568
201741273.4026.60668,3887勝以上18.975881
201811351.5548.45664,2448勝以上12.846287
201821451.4548.55660,3918勝以上20.445780
201831563.9136.09623,6479勝以上12.816087
201841647.5152.49629,8599勝以上20.315680
201911770.2829.72578,76510勝以上12.365988
201921858.7041.30558,62411勝以上7.996192
201931942.4557.55575,49411勝以上13.605886
201942073.2926.71521,88112勝以上7.926092
202012146.2553.75529,70912勝以上12.815787
202022258.1741.83512,39813勝以上8.665991
202032356.1243.88499,85514勝以上5.826194
202042445.5854.42508,69214勝以上9.535890
202112551.3648.64505,92515勝以上6.796093
202122653.3846.62499,08515勝以上10.135890
202132757.1542.85484,81116勝以上7.025993
202142854.4945.51476,10416勝以上10.195790
202212953.8846.12468,71517勝以上7.335993
202223058.6841.32452,44117勝以上10.145790
202233169.7130.29416,77118勝以上6.555893
202243251.2348.77414,72019勝以上4.755995
202313353.2446.76409,34519勝以上6.985893
202323449.9750.03409,39420勝以上5.165995
202333563.6036.40387,12320勝以上6.935793
202343649.2350.77388,31621勝以上5.195895
202413752.6147.39384,26222勝以上3.756096
202423872.9627.04348,97122勝以上4.755895
202433947.4652.54352,51723勝以上3.575996
202444063.6236.38333,31123勝以上4.825895

(スマホからだと表が見づらいでしょうから、少しでも見やすいように画像も添えておきます。)

このように、惨憺たる結果になりました。開始3年程度で8割の口座が損失を出し、5年目には9割に。10年後には95%の口座が損失になります。累計損益がプラスになった口座は5%にも満たない状態です。

この試算では、10年後も利益を出しているのは100人中たった5人だけ。ごく一部の、選ばれた人たちだけです。

ところで、平均値が333,311円となっています。100万円からすればかなり減っていますが、思ったより減っていないと思うかもしれません。しかしこれはあくまで平均値です。40期中23期以上勝った口座(=40戦23勝17敗以上の成績を出した口座)が大きく平均利益を押し上げています。では、100人中、上から数えて50番目の人の口座の残高、つまり中央値はどうでしょうか。

詳細な計算結果を記事の文末に示します。…が、ここまでにごちゃごちゃやらなくても、40期の平均敗北数が56.61%であり、全40期あるのだから、平均的に56.61%*40=22.64敗になる。よって、そのことからも中央値は23敗になると言えます。少なくとも50%以上の人が22敗以上または23敗以上のどちらかになります。

22敗の人は10年で17勝23敗の成績に、22敗の場合は18勝23敗の成績になります。その場合の口座資金は前者でわずか196,446円となり、後者ではなんと130,964円にまで減ります。100万円スタートだったのに、半分以上の人が10年かけた挙句、初期資金を5分の1以下まで減らしてしまいます。
しかも「50%以上の人が18勝以下」ですから、この下位半分の損失口座の中には10勝や5勝となってしまった口座も含まれます。
このように、今回の前提条件では100万円でスタートして10年続けると、半数以上の人が80万円以上の損失を出すことになります。
1円以上の損失を出す人に至っては95%以上です。その一方で、利益を出す人はたったの4.8%です。
もちろん1期ごとの増減が±20%に固定されるわけではありませんから、あくまで前提条件に基づく試算値です。また、勝敗口座の比率については、1期ごとの増減の比率が一定であれば同様ですから、ある程度の妥当性はあると思います。

さて、いったいこの4.8%の人は何者なのか。いったい何が違うのか。
10年40期を運だけで維持することはほとんど不可能です。運だけでは片付けられません。
彼らには市場の中に明確なエッジを見つけたものと考えられます。

マーケットにおける「エッジ」とは、トレードにおいてある売買ルールが一定の期間中だけ「なぜか」期待値がプラスになる、再現性のある優位性や有利な条件のことを言います。
もっと簡単に言うと、「エッジ」とは、「理由はよくわからないが、繰り返して続けるほどプラスになる確率が高い、“ちょっとしたコツ”」です。理由がわかっている必要はありません。というか、解明が困難なものも多いです。

本サイトではこのエッジを徹底追及し、その存在を周知しています。エッジはマーケットに明確に存在してきました
負けいるトレーダーの多くはエッジが存在していることすら知らない人も少なくないでしょう。
もしかすると20人に1人もいないかもしれない、利益を出しつづけるトレーダーになるためには、エッジを探しながら、エッジを意識しながらトレードすることが不可欠であると考えます。

【補足資料】
最低勝利数、n期末の勝利口座の割合、中央値の計算根拠、勝敗と最終資産額の表です。

・n期末の最低必要勝数W:W ≥ nln(1/0.8) / ln(1.2/0.8)​=nln1.25 / ln1.5​

・n期末の割合:P(k,n)=(1−pn​)P(k,n−1)+pn​P(k−1,n−1)

【最終資産額の表】

勝利数敗北数最終資産額(円)
040133
139199
238299
337449
436673
5351,009
6341,514
7332,271
8323,407
9315,110
10307,665
112911,497
122817,246
132725,869
142638,804
152558,206
162487,309
1723130,964
1822196,446
1921294,668
2020442,002
2119663,004
2218994,505
23171,491,758
24162,237,637
25153,356,456
26145,034,684
27137,552,026
281211,328,039
291116,992,058
301025,488,088
31938,232,131
32857,348,197
33786,022,296
346129,033,444
355193,550,165
364290,325,248
373435,487,872
382653,231,808
391979,847,712
4001,469,771,568
【中央値の計算根拠】

1) 中央値=「勝ち数の中央値」に対応する資産
最終資産は V = 100万円 × 1.2w × 0.840-w = 100万円 × 0.840 × 1.5w と、勝ち数 w の単調増関数だから「資産の中央値」は「勝ち数 w の中央値」をそのまま資産式に代入した値になります。

2) 勝ち数の中央値は 17 勝(= 23 敗)
与えられた40期の勝率列(期ごとに異なる pt)の合計は μ = ∑pt ≈ 17.36
分散は σ2 = ∑pt(1-pt) ≈ 9.50 → 標準偏差 σ ≈ 3.08。
正規近似+連続修正で
Pr(W ≤ 17) ≈ Φ((17.5 – μ) / σ) = Φ((17.5 – 17.36) / 3.08) ≈ 0.518
となり、中央値は 17 勝(= 23 敗)側になる。
(離散分布なので中央値は 17 または 18 になりますが、この近似では 17 が中央値。)
よって計算値は
Vmedian = 100万円 × 1.217 × 0.823 = 100万円 × 0.840 × 1.517 ≈ 130,964 円
参考までに、もし中央値が 18 勝に転ぶケースでも
100万円 × 1.218 × 0.822 = 130,964 × 1.5 ≈ 196,446 円 です。
いずれにせよ中央値は大きく元本を下回ります(±20% は掛け算なので、勝率が5割未満だと“典型的な道筋”は強く目減りします)。

【オマケ】
この試算において、40戦全勝の場合は100万円の初期資金が14億7000万円になります。
しかしその確率はわずか320兆分の1です。これを「運で引ける可能性」はほぼないと言っていいでしょう。

320兆分の1の当たりを運で引くのがどれだけ困難か。
これまで地球上に誕生した人類(ホモ・サピエンス)の総数を正確に数えることは不可能ですが、過去の人口増加率や出生率などのデータを基にした推定値が存在します。
最も広く引用されている推定値の一つは、米国の非営利団体の人口参照局(PRB: Population Reference Bureau)が2002年と2011年に発表したものです。その推定によると、およそ5万年前(ホモ・サピエンスが広く地球に拡散し始めた時期)から現在までに誕生した人類の総数は、約1,080億人にのぼるとされています。つまり、これまで地球に誕生した全人類が、1セット10年のトレードを人生で5回トライしたとして、延べ5400億回の挑戦ができます。しかし、当たるのは320兆分の1です。
全人類がその誕生から今日まで生涯トレードして、全員外れたら人類の歴史をリセットするものとする。誰かが当たるまで平均で592回分のリセットが発生します。こんなのは、到底運で引けるものではありませんね。

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